マニュアル 1.0.58PDF をダウンロード

第8章周波数の解析

この章では、振動などの信号を周波数で調べる機能を説明します。グラフを周波数で表示する FFT表示、系列ごとにかける フィルタ、解析 タブの STFTピーク・Wavelet解析・周波数異常 です。

この章の例には、練習用のサンプルデータ sample_vibration.csv を使います。架空のモータの振動試験のデータです(実在の試験の記録ではありません)。

項目 内容
列 時間 [s] と 加速度 [m/s²] の2つです
収録 1000 Hz(0.001 秒ごと)で 18 秒です。扱える周波数の上限(ナイキスト周波数)は 500 Hz です
いつも入っている成分 50 Hz(振幅 1.0)と 120 Hz(振幅 0.5)です
途中で加わる成分 12〜16 秒だけ、230 Hz(振幅 1.5)が加わります。この間は 230 Hz がいちばん強い成分です
雑音 不規則な雑音(標準偏差 0.3)が全体に入っています

8.1周波数の解析でできること

機能 わかること 操作する場所
FFT表示 データ全体(または一部の時間)に、どの周波数の成分がどれだけの大きさで含まれるか ツールバーの FFT と、解析 タブの FFT表示
フィルタ 決まった周波数より低い(高い)成分だけを残した波形 系列 タブの系列の ▾
STFTピーク 時間ごとに、いちばん強い周波数がどう移り変わるか 解析 タブ
Wavelet解析 時間と周波数の両方の軸で、成分の強さの分布 解析 タブ
周波数異常 周波数の特徴が普段と違う時間帯 解析 タブ

解析 タブの解析は、どれも 対象(解析対象 と 解析範囲 を選ぶ)→ 実行 → 結果 の順に使います。結果は、画面の下の 解析結果 に表で出ます。この流れと結果の見方は、第9章で説明します。この章では、周波数の解析に固有の設定と結果だけを説明します。

8.2周波数の単位

周波数の値は、X軸の単位から求めます。どの機能で、どの単位になるかは次のとおりです。

機能 周波数の単位
FFT表示・STFTピーク・Wavelet解析・周波数異常 周波数単位 が Hz相当(初めの設定)で、X軸の単位が時間(ms・秒・分・時・日など)のときは、秒に直して Hz で計算します。X軸がミリ秒のデータでも、50 Hz の成分は 50 Hz と表示されます
同上(X軸の単位が時間でないとき) X の単位の逆数のまま計算し、単位を Hz相当 と表示します
同上(周波数単位 が 1/X のとき) X軸の単位によらず、X の単位の逆数です。X軸がミリ秒なら、50 Hz の成分は 0.05 と表示されます
フィルタ 遮断周波数(fc)は、いつも X の単位の逆数です。X軸が秒なら Hz、ミリ秒なら 1/ms です(1/ms は 1000 Hz)。系列の詳細に、使っている単位が表示されます

8.3FFT表示

FFT表示は、系列をフーリエ変換して、横軸を周波数にしたグラフ(スペクトル)を表示します。

  1. 系列 タブで、調べたい系列にチェックを入れて表示します。
  2. ツールバーの FFT を押します。表示している系列ごとに段を分けて、スペクトルを表示します。サイドバーには、解析 タブの FFT表示 が開きます。
  3. 時系列の表示に戻すときは、統合 か 縦列 を押します。
サンプルデータのスペクトル(振幅 0-p(片振幅)・線形の横軸)
図8-1サンプルデータのスペクトル(振幅 0-p(片振幅)・線形の横軸)
  1. 1FFT: グラフを周波数で表示します
  2. 2段の名前: 系列の名前の後ろに、いちばん大きい成分の周波数(ピーク)を表示します。計算に注意があるときは 注意 が付き、マウスを重ねると内容が出ます
  3. 3対象・表示量: 計算に使う時間の範囲と、縦軸に表示する量です
  4. 4横軸表示・対数ラベル・補助目盛: 横軸を線形にするか対数にするかと、対数の目盛の出し方です
  5. 5窓関数・周波数単位: 計算に使う窓関数と、周波数の単位です
  6. 6DC除去・ピーク表示: 平均を引いてから計算するかと、段の名前に ピーク を出すかです

サンプルデータでは、50 Hz(約 0.96)・120 Hz(約 0.50)・230 Hz(約 0.27)に山が立ちます。230 Hz は振幅 1.5 の成分ですが、18 秒のうち 4 秒しか入っていないため、データ全体で計算すると小さく出ます。その時間だけの大きさを知りたいときは、対象 を 現在表示レンジ にし、時系列の表示で 12〜16 秒を表示してから FFT に戻します。こうすると、230 Hz は約 1.50 と読めます。

設定の一覧

設定 選べるもの(太字が初めの設定) 説明
対象 全データ/現在表示レンジ 現在表示レンジ では、時系列の表示(統合・縦列)で最後に表示していた X の範囲だけを計算します
表示量 振幅 0-p(片振幅) ほか(下の表) 縦軸に表示する量です
PSD方式・区間長・重なり ピリオドグラム(単一区間)/Welch法(区間平均PSD) 表示量 が PSD(パワースペクトル密度) のときだけ表示されます(後述)
dB表示 なし/dBで表示 縦軸を dB にします。基準値(初めは 1)を基準にします。最大を0dB を あり にすると、段ごとに最大の値を 0 dB にします
横軸表示 線形/対数 対数 では 0 Hz の点を除いて描きます
対数ラベル 数値 (0.1 / 1 / 10)/10のべき (10⁰ / 10¹) 対数の横軸の目盛の数字の書き方です。線形 のときは効きません
補助目盛 なし/補助線/軸上の目盛/線+目盛+2/5 対数の横軸の、10 のべきの間(2〜9 倍)の目盛の出し方です。線+目盛+2/5 では、2 と 5 に数字も付きます
窓関数 Hann/Hamming/Blackman/Flat-Top(振幅確度重視)/矩形 下の表
周波数単位 Hz相当/1/X 「周波数の単位」の節を見てください
DC除去 あり/なし あり では、平均を引いてから計算します。0 Hz に大きな値が出て、ほかの山が見えにくくなるのを防ぎます
ピーク表示 あり/なし 段の名前に、0 Hz を除いていちばん大きい点の周波数を表示します
X表示範囲 最小値・最大値 表示する周波数の範囲を数字で決め、FFT範囲を適用 を押します。FFT範囲リセット で全体に戻します
Y表示範囲(一括) 最小値・最大値 すべての段の縦軸を同じ範囲にします(Y範囲を一括適用/Y範囲リセット)

スペクトルの上でホイールを回すと周波数の軸を拡大・縮小し、ドラッグすると移動します。動くのは表示の範囲だけで、スペクトルは計算し直しません。

表示量

表示量 内容 縦軸の単位(系列の単位が m/s² のとき)
振幅 0-p(片振幅) 正弦波の振幅(0 から山まで)です m/s²
振幅 p-p(両振幅) 山から谷までの大きさです。0-p の 2 倍です m/s²
実効値 rms 実効値です。正弦波では 0-p の 1/√2 倍です m/s²
パワー 0-p の 2 乗です (m/s²)²
PSD(パワースペクトル密度) 1 Hz あたりのパワー(パワースペクトル密度)です。計算に使う点の数によらないので、雑音の大きさを比べるときに使います (m/s²)²/Hz

p-p と実効値は、正弦波の成分に対して正しい値です。広い周波数に広がる雑音の大きさを比べるときは、PSD(パワースペクトル密度) を使ってください。

窓関数

窓関数は、計算する区間の両端をなめらかに 0 に近づける重みです。どれを選ぶかで、山の高さと幅が少し変わります。サンプルデータの 50 Hz(振幅 1.0)を 振幅 0-p(片振幅) で読んだ値を添えます。

窓関数 向いている使い方 50 Hz の読み
Hann ふだんの使い方です。初めの設定です 0.964
Hamming Hann に近い性質です 0.957
Blackman 大きな山のすそを狭くしたいとき 0.970
Flat-Top(振幅確度重視) 振幅を数値として読みたいとき。山の幅は広がり、近い2つの周波数は分けにくくなります 0.991
矩形 重みをかけません。区間の長さがちょうど周期の整数倍の信号向けです 0.918

Hann では、成分の周波数が計算の刻み(分解能)の目盛からずれると、振幅が最大で約 15% 低く読めます。振幅の値を報告に使うときは、Flat-Top(振幅確度重視) を選んでください。

PSD と Welch 法

表示量 を PSD(パワースペクトル密度) にすると、PSD方式 を選べます。

方式 計算のしかた
ピリオドグラム(単一区間) データ全体を1つの区間として計算します。周波数は細かく分かれますが、雑音の部分はぎざぎざになります
Welch法(区間平均PSD) データを 区間長 ごとの区間に分け、区間ごとのスペクトルを平均します。雑音の部分がなめらかになり、雑音の大きさを読みやすくなります。そのかわり、周波数の分かれ方は粗くなります
  • 区間長 は秒で指定します(X軸がミリ秒のデータでも秒です)。0 にすると、データの点の数の 8 分の 1 を区間にします。
  • 重なり は、となりの区間と重ねる割合です(0%・50%・75%)。
  • 周波数の細かさ(分解能)は、1 ÷(区間の点の数を 2 のべき乗に切り上げた数 × 刻み)です。サンプルデータで区間長を 0.5 秒にすると、500 点が 512 点に切り上がり、分解能は約 1.95 Hz です。山の周波数もこの刻みで読むので、50 Hz の成分は 50.8 Hz と表示されます。
  • 区間が2つ以上取れないときは ピリオドグラム(単一区間) で計算し、段の名前に 注意 が付きます(区間数が不足するためピリオドグラムで計算しました。区間長を短くしてください。)。
Welch法(区間平均PSD)(区間長 0.5 秒)の PSD(パワースペクトル密度) を、dB と対数の横軸で表示したところ
図8-2Welch法(区間平均PSD)(区間長 0.5 秒)の PSD(パワースペクトル密度) を、dB と対数の横軸で表示したところ

計算の決まり

  • 計算に使う値は、グラフに描いている値(単位換算・表示名編集 とフィルタをかけた後の値)です。
  • 点の数が 65,536 点を超えるときは、折り返し(高い周波数が低い周波数に化けること)を抑える平均をかけてから点を減らして計算します。高い周波数の成分は小さくなります。段の名前に 注意 が付きます。
  • 点の数が 8 点より少ないときは計算しません。
  • X が戻る箇所や、同じ X が続く箇所があるときは計算しません(等間隔の1本の列として扱えないため FFT を計算しませんと表示されます)。
  • 刻みが中央値から 5% を超えてずれる箇所があるときは、等間隔とみなして計算し、注意 を付けます(X間隔のばらつきが大きいためFFT周波数は近似です)。欠測や時刻の飛びがあるときも、この注意が出ます(「欠測と時刻の飛びの扱い」の節)。

8.4系列のフィルタ

フィルタは、系列の波形から決まった周波数の成分を取り除きます。系列 タブで系列の ▾ を押し、フィルタ の欄で設定します。

加速度に、80 Hz のローパスを Butterworth・4 次・ゼロ位相でかけたところ
図8-3加速度に、80 Hz のローパスを Butterworth・4 次・ゼロ位相でかけたところ
  1. 1種類: なし・ローパス・ハイパス・バンドパス・バンドストップ・ノッチ・移動平均・移動メディアン から選びます。種類によって、下の欄が入れ替わります(後述)
  2. 2IIR特性: Butterworth・Chebyshev (1dB)・Bessel から選びます
  3. 3次数: 1〜6 です。大きいほど、遮断周波数の外側を急に減らします
  4. 4位相: 通常 か ゼロ位相 を選びます
  5. 5遮断fc: 遮断周波数です。バンドパス では 下限fc と 上限fc の2つになります
  6. 6データの刻みと、扱える周波数の上限(Nyq=ナイキスト周波数)です。遮断周波数はこの単位で入力します
  7. 7計算の説明と注意です(後述)
  8. 8特性図: このフィルタが、どの周波数をどれだけ減らすか(振幅の比を dB で)を描きます(後述)
  9. 9拡大…: 大きい図を開きます
設定 初めの設定
種類 なし
IIR特性 Butterworth
次数 1
位相 通常
遮断fc・下限fc ナイキスト周波数の 0.1 倍(サンプルデータでは 50 Hz)
上限fc ナイキスト周波数の 0.3 倍(サンプルデータでは 150 Hz)

遮断周波数は、ナイキスト周波数の 1 兆分の 1 から、ナイキスト周波数のわずかに手前までの範囲に収められます。

フィルタをかけた値は、グラフ・FFT表示・解析(データ が 表示/フィルタ後 のとき)に使われます。単位換算・表示名編集 を使っているときは、換算した後の値にフィルタをかけます。読み込んだデータそのものは変わりません。

フィルタをかけた後のスペクトル(120 Hz は約 0.50 から約 0.015 に減り、230 Hz は見えなくなる)
図8-4フィルタをかけた後のスペクトル(120 Hz は約 0.50 から約 0.015 に減り、230 Hz は見えなくなる)

遮断周波数(fc)の意味

種類 通す周波数 fc での減り方
ローパス fc より低い周波数 通常 で −3 dB(振幅が約 0.71 倍)、ゼロ位相 で −6 dB(約 0.50 倍)
ハイパス fc より高い周波数 同上
バンドパス 下限fc から 上限fc の間 下限 fc のハイパスと上限 fc のローパスを続けてかけます。それぞれの fc で同上の減り方になります

fc は、3 つの特性のどれでも「1 回かけたときに −3 dB になる周波数」です。Chebyshev (1dB) も、通過域の波打ちの端ではなく −3 dB の点を fc にしています。

fc と同じ周波数の正弦波にフィルタをかけて、振幅の比を測った結果です(1000 Hz のデータ・fc 50 Hz。次数 1〜6、3 つの特性のどれも同じ値でした)。

位相 fc での振幅の比
通常 −3.01 dB(0.707 倍)
ゼロ位相 −6.02 dB(0.500 倍)

特性の違い

ローパス・4 次・通常・fc 50 Hz で、周波数ごとの振幅の比(dB)と、段差の入力に対する行き過ぎ(オーバーシュート)を測った結果です。

特性 10 Hz 20 Hz 30 Hz 40 Hz 50 Hz 100 Hz 行き過ぎ
Butterworth 0.00 0.00 −0.07 −0.66 −3.01 −25.0 10.9%
Chebyshev (1dB) +0.55 +0.96 +0.11 +0.66 −3.01 −36.7 21.9%
Bessel −0.11 −0.44 −1.01 −1.85 −3.01 −14.1 0.9%
  • Butterworth: fc より下はほぼ平らに通します。迷ったらこれを選びます。
  • Chebyshev (1dB): fc より上を最も急に減らします。そのかわり、fc より下で振幅が最大約 1 dB 波打ち、段差のあとに大きく揺れます。
  • Bessel: 減り方はゆるやかですが、波形の形をほとんど崩しません。段差やパルスの形を見たいときに選びます。

通常の位相とゼロ位相

位相 かけ方 特徴
通常 時間の前から後ろへ1回かけます フィルタの後の波形は、元の波形より遅れます。fc での減り方は −3 dB です
ゼロ位相 前から後ろへかけたあと、後ろから前へもう1回かけます 時間の遅れが出ません。元の波形と時刻をそろえて比べるときに向いています。2 回かけるので、fc での減り方は −6 dB、fc の外側の減り方も 2 倍(dB で)になります。段差の手前にも小さな揺れが出ます

バンドパスの作り

バンドパス は、下限fc のハイパスと 上限fc のローパスを続けてかけたものです。次数 は、ハイパスとローパスのそれぞれに使われます。下限と上限が近いと、2 つのフィルタの減り方が重なり、間の周波数も減ります。

帯域(Butterworth・ゼロ位相) 下限 fc での比 真ん中での比 上限 fc での比
30〜100 Hz・4 次 −6.02 dB −6.46 dB
40〜60 Hz・2 次 −7.57 dB −6.33 dB(50 Hz) −7.57 dB

バンドストップとノッチ

バンドストップ は、下限fc から 上限fc の帯域を取り除き、その外側を通します(バンドパスの逆)。IIR特性 のローパスの原型を、帯域を除くフィルタに変換して作ります。下限と上限で −3 dB(ゼロ位相 では −6 dB)です。

ノッチ は、中心 f0 のまわりのごく狭い帯域だけを取り除きます。電源の 50/60 Hz や、回転の 1 次の成分を取り除くときに使います。

欄 内容
中心 f0 取り除く周波数
Q(鋭さ) 大きいほど狭く取り除きます。取り除く幅(−3 dB の幅)は約 f0/Q です。初めは 30
高調波 f0 のほかに 2f0、3f0 … もまとめて取り除く数(1〜10。1 は f0 だけ)。ナイキスト周波数より上は除きません

振幅の比(dB)を、1000 Hz のデータで求めた値です。

帯域・設定 5 Hz 20 Hz 30 Hz 50 Hz 80 Hz 120 Hz 200 Hz
バンドストップ 20〜120 Hz(Butterworth・4 次・通常) 0.00 −3.01 −23.6 ほぼ 0 倍 −25.5 −3.01 −0.01
ノッチ(f0 50 Hz) 40 Hz 45 Hz 49 Hz 50 Hz 51 Hz 55 Hz 60 Hz
Q 30 −0.02 −0.10 −2.20 ほぼ 0 倍 −2.27 −0.13 −0.03
Q 5 −0.76 −2.72 ほぼ 0 倍 −3.13 −1.09

移動平均と移動メディアン

時間の上で、となりの点とならして滑らかにします。どちらも、各点を中心に置いた 窓(点) の点数で計算するので、時間の遅れはありません。系列の端では、届く点だけで計算します。

種類 計算 向いている用途
移動平均 N 点の平均 ノイズを均して滑らかにします。ローパスに近い働きで、fs/N(N 点でちょうど 1 周期になる周波数)とその整数倍は消えます
移動メディアン N 点の中央値 スパイク(とび値)を取り除きます。とび値が窓の半分より少なければ、元の波形はほとんど崩しません。値の大小で選ぶ計算(非線形)なので、周波数の特性はありません

移動平均 の −3 dB の周波数は、1000 Hz のデータで 5 点が約 90 Hz、11 点が約 40 Hz です。

特性図

系列の詳細の フィルタ の欄の下に、いまの設定の特性図が出ます。横軸は周波数(対数)、縦軸は振幅の比(dB)です。網かけは通過域、点線は −3 dB と fc です。曲線は、実際にかけている係数そのものから求めています。ゼロ位相 では 2 回かけた分の減り方で描きます。移動メディアン は周波数の特性を持たないので、図の代わりに説明が出ます。

拡大… を押すと、大きい図が開きます。

120 Hz のノッチ(Q 30)の大きい図。かけた後のスペクトルでは 120 Hz の山が消えている
図8-5120 Hz のノッチ(Q 30)の大きい図。かけた後のスペクトルでは 120 Hz の山が消えている
  1. 1設定の要約と、データの刻み(サンプリングの周波数とナイキスト周波数)
  2. 2この系列のスペクトルを重ねる: その系列のスペクトルを、かける前(灰)とかけた後(橙)で重ねます
  3. 3振幅の比(dB)。グラフの上にマウスを置くと、その周波数での減り方(dB と倍率)が出ます
  4. 4位相のずれ。ゼロ位相 ではずれません
  5. 5−3 dB・−20 dB・−40 dB になる周波数と、fc の 2 倍・10 倍での減り方

閉じるには 閉じる か Esc を押します。

表示される説明と注意

系列の詳細の フィルタ の欄の下に、次の文が表示されます。

表示 出るとき
ゼロ位相: 前後 2 回かけるため、遮断 fc での減衰が 2 倍になります(Butterworth で約 −6 dB。通常は −3 dB) 位相 が ゼロ位相 のとき(説明です)
バンドパス: ハイパス(下限 fc)とローパス(上限 fc)を直列にかけています。下限と上限が近いと、間の周波数も減衰します 種類 が バンドパス のとき(説明です)
バンドストップ: 下限〜上限 fc の帯域を除きます(ローパスの原型を帯域除去に変換。下限と上限で −3 dB) 種類 が バンドストップ のとき(説明です)
ノッチ: f0 のまわりだけを除きます で始まる文 種類 が ノッチ のとき。取り除く幅(約 f0/Q)が入ります
移動平均: 中心に置いた で始まる文 種類 が 移動平均 のとき。点数と、消える周波数(fs/N)が入ります
移動メディアン: 中心に置いた で始まる文 種類 が 移動メディアン のとき
区間に分けてかけています を含む文 欠測や時刻の飛びがあるとき(次の節)。区間の数・欠測の点の数・飛びの数が入ります
フィルタは等間隔を前提にするため、結果は近似です を含む文 刻みが、刻みの中央値から 5% を超えてずれる箇所があるとき。結果は近似です
fc の 3 周期より短く、端の過渡が結果に大きく残ります を含む文 いちばん短い区間の長さ(X軸の単位で数えた長さ)× いちばん低い fc が 3 より小さいとき(下の注意)
フィルタをかけていません を含む文 X が戻る箇所や、同じ X が続く箇所があるとき。フィルタはかかりません

欠測と時刻の飛び

フィルタは、欠測(空欄など、数値でない値)と時刻の飛び(刻みの中央値の 1.5 倍を超える間隔)で系列を区間に分け、区間ごとにかけます。区間をまたいで値をつなぐことはありません。欠測の位置は、フィルタの後も空いたままです。刻みは、となり合う点の間隔の中央値を使います。欠測や飛びがあっても、刻みを大きく見積もることはありません。

8.5STFTピーク

STFTピークは、データを短い時間の窓に区切って窓ごとにスペクトルを計算し、窓ごとにいちばん強い周波数を求めます。回転数の変化や、途中から現れる成分を追うのに使います。

  1. 解析 タブで、解析対象 に調べる系列を選びます。
  2. STFTピーク を開き、窓幅 と 刻み を入れます。
  3. ピーク推移を計算 を押します。
STFTピーク(窓幅 1 秒・刻み 0.25 秒)を計算し、ピーク系列を追加したところ
図8-6STFTピーク(窓幅 1 秒・刻み 0.25 秒)を計算し、ピーク系列を追加したところ
  1. 1窓幅・刻み・表示件数: 窓の長さ、窓をずらす間隔、表に出す件数です
  2. 2ピーク推移を計算: 計算します
  3. 3結果の表: 窓の中心の時刻、いちばん強い周波数、その強さ、判定 です。強さの大きい順に並びます
  4. 4ピーク系列を追加: 窓ごとのピーク周波数を、新しい系列としてグラフに加えます

サンプルデータでは、ピーク周波数が 12〜16 秒の間だけ 49.8 Hz から 230.5 Hz に変わります。追加した系列(STFTピーク が名前に付き、単位は Hz)を見ると、変わった時刻がわかります。

設定 初めの設定 説明
窓幅 10 X の単位で指定します。窓の点の数は 8〜8192 点に収められます。1000 Hz のデータで 10 秒を指定すると 8192 点(8.192 秒)になります。実際に使った窓幅は、結果の見出しに表示されます
刻み 2 X の単位で指定します。窓幅より大きくはなりません。計算が多すぎるときは、自動で広げます
表示件数 20 3〜100 です
  • 周波数の細かさは、1 ÷(窓の点の数を 2 のべき乗に切り上げた数 × 刻み)です。窓幅 1 秒(1000 点 → 1024 点)では約 0.98 Hz です。そのため、50 Hz は 49.8 Hz、230 Hz は 230.5 Hz と表示されます。
  • 窓関数と周波数の単位は、FFT表示 の 窓関数 と 周波数単位 を使います。強さは振幅(0-p)です。FFT表示 の 表示量 が パワー のときは、パワーになります。
  • 判定 は、1つ前の窓のピーク周波数と比べた変化です。8% を超えて高ければ 上昇中、8% を超えて低ければ 下降中、それ以外は 横ばい です。

8.6Wavelet解析

Wavelet解析は、時間と周波数の両方の軸で、成分の強さを色の分布(スカログラム)として表示します。短い時間だけ現れる成分を見つけるのに向いています。計算には Morlet ウェーブレットを使います。

  1. 解析 タブで、解析対象 に調べる系列を選びます。
  2. Wavelet解析 を開き、必要なら 最小周波数 と 最大周波数 を入れます。
  3. Waveletを計算 を押します。
Wavelet解析(20〜400 Hz)の結果
図8-7Wavelet解析(20〜400 Hz)の結果
  1. 1最小周波数・最大周波数・周波数分割・時間上限: 計算する周波数の範囲と、周波数・時間の分け方です
  2. 2Waveletを計算: 計算します
  3. 3スカログラム: 横が時間、縦が周波数(下が低く、対数の目盛)です。赤いほど強い成分です。端の暗い部分は 境界影響範囲(COI) です
  4. 4結果の表: 時刻ごとに最も強い周波数(リッジ)を、強さの大きい順に並べます

サンプルデータでは、50 Hz の帯が全体に、12〜16 秒に 230 Hz の帯が見えます。

設定 初めの設定 説明
最小周波数 自動 自動では、1 ÷ データの長さ(秒)です。サンプルデータでは約 0.056 Hz です
最大周波数 自動 自動では、ナイキスト周波数の 0.8 倍です。サンプルデータでは 400 Hz です
周波数分割 48 12〜96 です。最小から最大までを、対数で等しい間隔に分けます
時間上限 900 100〜2000 です。時間の方向に計算する点の数の上限です。実際の数は、12000 ÷ 周波数分割 も超えません(48 分割では約 250 点)
表示件数 20 3〜100 です
  • 周波数の単位は、FFT表示 の 周波数単位 に従います。自動の下限は、周波数単位 が Hz のときは X軸の単位によらず秒で計算します(1/X を選んだときは X軸の単位で計算します)。
  • 境界影響範囲(COI)(境界の影響を受ける範囲)は、データの端に近く、周波数が低い部分です。この部分の強さは、端で計算が途切れるため小さく出ます。表の 判定 は COI 内(参考値) となり、リッジの計算からも外します。それ以外の行は、強さが表の最大の半分以上なら エネルギー集中、半分より小さければ 基準 です。
  • ピーク系列を追加 で、時刻ごとのリッジの周波数を、新しい系列としてグラフに加えられます。

8.7周波数異常

周波数異常は、窓ごとのスペクトルから1つの指標を取り出し、その指標が普段と大きく違う窓を候補として挙げます。

  1. 解析 タブで、解析対象 に調べる系列を選びます。
  2. 周波数異常 を開き、指標・窓幅・刻み・しきい値 を入れます。
  3. 周波数異常を検出 を押します。
周波数異常(ピーク周波数・窓幅 1 秒・刻み 0.25 秒)の結果
図8-8周波数異常(ピーク周波数・窓幅 1 秒・刻み 0.25 秒)の結果
  1. 1指標・窓幅・刻み・しきい値: 何を比べるか、窓の長さと間隔、候補にする Z の大きさです
  2. 2周波数異常を検出: 検出します
  3. 3結果の表: 候補の窓の区間・主周波数・変化・判定です。時刻の順に並びます

サンプルデータでは、11.8〜16.2 秒の 8 つの窓が候補になります。主周波数は 230.47 Hz(基準の 49.80 Hz の約 4.6 倍)で、判定 は 高周波化 です。

設定 初めの設定 説明
指標 ピーク周波数 ピーク周波数: 窓の中でいちばん強い周波数です。ピーク強度: その強さ(振幅 0-p)です。帯域パワー: 窓の中の値の2乗の平均(0 Hz を除く。単位は系列の単位の2乗)です
窓幅 10 X の単位で指定します。窓の点の数は 8〜8192 点に収められます(STFTピーク と同じ)
刻み 2 X の単位で指定します
しきい値 3 0.5〜20 です。Z(普段のばらつきの何倍外れているか)がこの値以上の窓を候補にします。Z の意味は第9章で説明します
表示件数 20 3〜100 です
  • 近い候補(窓幅の半分より近いもの)は、Z の大きいほうを残します。
  • 結果の表の 主周波数(基準 {b}) は、候補の窓のピーク周波数です。基準は、すべての窓のピーク周波数の中央値です。変化 は基準に対する比で、1.15 倍を超えれば 高周波化、0.87 倍より小さければ 低周波化、それ以外は 横ばい です。
  • 窓関数と周波数の単位は、FFT表示 の設定を使います。
  • スコアを系列追加 で、窓ごとの Z を新しい系列としてグラフに加えられます。
  • STFTピーク と同じく、窓幅は見たい変化より短くしてください。サンプルデータを初めの設定で計算すると、窓が 5 つしか取れず、候補は 0 件です。

8.8欠測と時刻の飛びの扱い

欠測(空欄など、数値でない値)と時刻の飛び(刻みの中央値の 1.5 倍を超える間隔)の扱いは、機能ごとに次のとおりです。

機能 扱い 画面の表示
FFT表示 欠測の点を除き、残った点を詰めて1本の列として計算します。時刻の飛びも、そのままつないで計算します 段の名前に 注意(X間隔のばらつきが大きいためFFT周波数は近似です)
フィルタ 欠測と飛びで区間に分け、区間ごとにかけます。欠測の位置は空いたままです 区間に分けてかけています を含む文
STFTピーク・周波数異常 刻みの中央値の等間隔の格子に並べ直し、欠測と飛びの位置を空けます。窓の中の空きは、その窓の平均で埋めます。半分より多く空いた窓は計算しません 結果の見出しに欠けを空けた点窓の中の欠けを平均で埋めた点半分より多く欠けて計算しなかった窓と、それぞれの数
Wavelet解析 同じ格子に並べ直し、空きは全体の平均で埋めます 結果の見出しに欠けを空けた点と、その数
  • X が戻る箇所や同じ X が続く箇所がある系列は、どの機能でも計算しません。画面に理由が表示されます。
  • 時刻の飛びが大きすぎて等間隔の格子に並べられないときは、解析を止め、範囲を選ぶように表示します。